東京地方裁判所 昭和41年(ワ)5702号 判決
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【判決理由】そこで、本件建物の昭和三九年六月以降における賃料はいくらが相当であるかについて検討するに、鑑定人一瀬忠の鑑定の結果によれば、右賃料は、昭和三九年六月から昭和四二年一月までは一ケ月金七、五〇〇円、同年二月以降は一ケ月金一万円が相当であることが認められる。しかしながら、成立に争いない乙第一六号証によれば、被告が原告から本件建物を借受けるについてはつぎのとおり特別の事情が存することが認められる。すなわち、被告は、かねて原告から東京都港区芝三田綱町一番地所在家屋番号同町九〇番、木造瓦葺平家建居宅一棟、建坪二一坪二合五勺の建物を、賃料一ケ月金二、三五〇円で賃借していたが、昭和三五年中に原告から明渡要求を受けて紛争を続け、当庁昭和三五年(ワ)第一〇、七六六号事件として係属したところ、昭和三六年一一月八日当事者間に裁判上の和解が成立したこと、右和解の内容は、前記賃貸借契約を合意解除して被告は一時他に転居し、原告において右建物を取壊した上、その敷地に別紙目録記載の建物を新築して、その二階部分を被告に賃貸するというものであることが認められ、その賃料に関する約定が原告主張のとおりであることは当事者間に争いないところである。右認定にかかる本件賃貸借成立の経緯と、前記乙第一六号証の記載内容とにかんがみると、右裁判上の和解においては、本件建物の賃料は、それに定められた据置期間たる二カ年を経過した後であつても、一般のそれよりもとくに低額とすることが定められた趣旨であると解すべきところ、鑑定人一瀬忠の鑑定においては、右のような特段の事情が斟酌されている形跡が認められないので、右鑑定の結果をもつて直ちに本件建物の適正賃料であるとするのは相当でない。そこで、当裁判所は、右鑑定の結果と、前認定にかかる諸般の事情とを彼此考慮した上、本件建物の適正な賃料額を、昭和三九年六月から昭和四二年一月までは一ケ月金六、七五〇円(旧賃料の五割増)とし、昭和四二年二月からは一ケ月金九、〇〇〇円(旧賃料の倍額)とするのが相当であると認める。
(下関忠義)